前方は前柱と呼びます。
椎間板と脊椎で構成される前柱。
脊柱は、椎骨と間に挟まった椎間板でできています。
しかし、発生学の観点からみると、椎間板の間にあるのが椎骨という見方になるのです。
古代の生物の脊椎は長い椎間板であり、その後の生物で椎間板が発達し、椎体となったのです。
椎間板の環状のまとまっている結合組織(筋膜コラーゲン網)は椎体の中のコラーゲンとつながっています。
さらに椎間板と椎体の前方は、丈夫な前縦靱帯に覆われています。
後方には後縦靭帯が覆っています。
(ⅰ)前縦靭帯
尾骨から後頭下部まで走行し、脊椎を結合しています。
過剰な伸展を防いでいます。
しかし、短縮位(脊椎屈曲位)で固定されるとそのまま短縮してしまいます。
ただ、しっかりと脊椎レベルの伸展動作で伸ばすこともできます。
(ⅱ)後縦靭帯
前縦靱帯と比べると少し細いですが、身体で強力な靱帯の一つです。
椎間板と脊髄の間を走行しています。
過度な屈曲を防いでいます。
走行上、損傷を受けると脊髄に影響を及ぼすのも特徴です。
脊髄を囲んでいる椎弓と、多数の突起が関節を作ったりしています。
発生学的に見ていくと、椎弓は二組の肋骨から作られました。
原子の魚が持っていた後方の肋骨が発達して作られたのです。
後方の肋骨が次第にアーチを形成し、わっか(椎弓)と突起(棘突起)を作りました。
また、外側にも肋骨を持っていた原子の魚は、その外側の肋骨は退化して横突起を形成しています。
横突起は、椎弓根と椎弓板を分離しています。
関節を作る突起もあります。
そのまま関節突起と呼ばれます。
関節突起の上関節窩と下関節窩が重なり合い、椎間関節を作ります。
安定性と運動を作り出しています。
脊椎の弾力性はテンセグリティ構造が大きく関与しています。
脊椎は、椎骨の連続でできていますが、椎骨は一つ下の椎骨に乗っかっていると考えることができます。ちょうど、積み木を順番に乗っけているようなものです。
この構造の周りを、筋・筋膜からなる結合組織が支えているのです。
積み木の圧縮要素と、筋・筋膜の張力要素がうまくかみ合い、安定した構造をとることができます。
・筋・筋膜の役割
(ⅰ)脊椎の伸展を助け、二次的カーブを作る。力を受ける方向、回旋、圧迫力を調整しながらテンセグリティ構造を作る。
(ⅱ)圧迫力の調整することは、脊椎を引き締めるまたは、脊椎をリラックスさせることを調整する。
(ⅲ)棘突起の位置関係を調節している。関節窩を引き寄せて、椎間板の圧を軽減している。筋の緊張が強いと椎骨の密集が強くなり、テンセグリティが崩れる。張力構造がなくなるので、椎間板は圧に耐えられず潰れる。