テンセグリティ―構造とバイオテンセグリティ


・テンセグリティ構造とは

 身体は、歪みを局部に集中させることなく全身に分散できるように設計されている。

 

 怪我や身体の使用パターンに対する代償作用はテンセグリティと呼ばれる幾何学を用いることで最もよく理解できる。

 

 張力・圧迫力・屈曲力・せん断力への対処はセラピストであれば日常茶飯事である。

 

 デカルト以来、人間は柔らかい機械と表現されてきた。

 

 骨は荷重を支える桁であり、筋はケーブルの役割がある。そして全体の構造はクレーンのようである。

 

 ニュートンの運動法則(さらには熱力学)を用いることで理解できる滑車やレバーの集まりなのだ。

 

 カオス数学やフラクタル方程式の出現と人間がどのように複雑性の端を漂っているか理解できたこと

が、人間の安定性・運動性ダイナミックの新たな理解につながった。

 

 身体を家や橋などの構造物ととらえるのではなくテンセグリティと呼ばれる独特な構造の例だととらえる。

 

 構造の安定性は持続的な圧縮力ではなく張力なバランスに依存する。

 

  人体の細胞レベルまでにも応用されるこの概念はバイオテンセグリティと呼ばれる。

 

・tensionとintegrity

 

 tensionは張力、integrityは完全性と訳す。

 

 この二つの単語をつなげてテンセグリティと呼ぶ。

 

 芸術家のKenneth Snelsonが考察しデザイナーのBuckminster Fullerが発展させたものである。

 

 骨に筋が付着しているのではなく、筋の内部で骨が浮いている一つの張力の網状組織だと考えることができる。 

 

 人間の機能的モデルとしてふさわしいと思えるような特徴が3つある。

 


 

・相互の張力ネットワーク

 

⒈内部の完全性

 

 内部の張力と圧縮のバランスにより、方向に関係なく形状を維持する。

 

⒉歪みの分散

 

 伸縮性のバンド(筋肉)は連続しており、圧縮材(骨)は孤立して浮かんでいるためすべての変形は歪みを生むがその歪みは構造全体へ均等に分散される。

 

 これにより局所的に大きなゆがみを生まずに構造全体に小さな歪みを生じさせる。

 

 歪みの分散は生物学的に立証されている。(Huijing2009)

 

 すべてのけがは即時的に全身に形成される分散現象となるため全身の評価と治療が必要となる。

 

⒊全方向への拡大と縮小

 

 ある方向に拡大すると、内部構造次第ではすべての方向に拡大する。

 

 圧縮するとすべての面が圧縮してより密になり弾力性が増す。

 

 損傷した部位の軸だけでなくすべての軸に沿って縮小し、後退する。

 


 

・治療への応用

 

 テンセグリティの観点から体を見ることは、局部の治療効率を大きく向上させ治療効果を長続きさせる筋の通った戦略につながる。

 

 筋膜は可塑性や弾力、伝達、全身にかかわる性質など重要な点が多い。