筋膜のネットワークは、神経系の機能と似ている点がいくつかあります。
これは感覚の情報伝達システム(機械受容性情報伝達システム)として機能しているということです。
膜組織・筋間中隔・浅筋膜・深筋膜といった種類のものは運動器の一部と言っていいことが分かってきています。
筋膜は、運動器の役割をするために固有受容器というものを持っているのです。
固有受容器から脳に送られる情報(求心性の情報)は、関連のある結合組織の構造が、どのように筋や骨格と関わっているかというところが重要になってきます。
ある筋膜が、筋や骨格と機械的で構造的な関係を持っている場合、固有受容に必要な機械受容性の情報を送ることができます。
これは、単に局所的な関係ではなくて、全身的な関係を頭に入れて考えなければなりません。
固有受容とは、全身・各部位の肢位と位置、方向、運動を感知する能力です。
関節の位置、動きを知覚する過程とも言いかえることができます。
固有受容の形態学的な基質=機械受容器と関わりのある求心性ニューロン(被胞性・非被胞性の機械受容性知覚性神経終末)は、運動の制御や姿勢保持に関わっています。
これは、固有性感覚器官(皮膚など)の感覚などと一緒に脳で統合されます。
そうして、普段感じている姿勢や動き、または無意識に取っている姿勢や動きになってきます。
これが運動覚や位置覚です。
(ⅰ)自由神経終末 FNE
(ⅱ)ルフィニ小体 RC
(ⅲ)層板小体・パチニ様小体 LC
(ⅳ)ゴルジ腱器官 GTO
(ⅴ)筋紡錘 MS
機械受容と固有受容は同義語ではありません。
固有受容の過程において必要な情報が、機械受容という位置づけになっています。
機械受容性の情報は、触角のものであって圧迫、伸長、圧縮といった機械的変化で興奮し情報を伝えています。
受容器は、筋膜や他の結合組織や皮膚、筋、関節に存在しています。
筋膜の固有受容が、筋膜構造の内部もしくは、直接付着している機械受容器で行われるとともに、筋膜構造(筋膜ネットワーク)自体が固有受容の過程で重要な役割を担っているのです。
直接付着していない機械受容器の変形を引き起こす力を伝達しているのは、筋膜ネットワークの形成によるものです。
筋膜が一種の軟部組織の骨格を作っていて、筋の付着部位としての役割がある。
このことを考えるために、Benjaminらは外骨格という単語を提唱している。
筋内にある機械受容器は、筋束が挿入され筋組織が力の伝達過程を助ける筋膜層に分布していて、空間的構成に適応する可能性があるのです。
筋膜のつながり・ネットワークを考えたとき、身体のある部位から固有受容性の情報が起こった場合、筋膜構造の重要性を評価するためには一部分の筋膜を解剖学的に見ていくだけでなく、その筋膜のネットワークの体系を考える必要があります。
多くの筋膜構造は、直接的または間接的に力伝達や、固有受容性の情報の伝達にかかわっています。
しかし、多くの解剖学の教科書は個々の筋肉の位置決めや力伝達における別々の動きを取り上げていて、本質と離れているように思います。
ただ筋膜を理解するうえで、個々の筋肉や構成体を覚えることも重要です。
筋膜は、筋また筋線維(厳密にいえば筋原線維)を包んでおり、さらにすべての器官を包み込んで、全身の連続性を持たせている密性の不規則な結合組織であることを考えなければなりません。